雪吊り・雪囲いについて

富山県を含む北陸地方の冬の風物詩である「雪吊り」には、樹木の形や大きさに合わせた複数の技法があります。
ただ雪から守るだけでなく、冬の庭園を美しく彩る「造形美」としての側面も持っています。
1. りんご吊り(代表的な手法)
最も一般的で、兼六園などのニュース映像でもよく見られる華やかな手法です。
• 構造: 樹木の幹の近くに長い竹柱(芯柱)を立て、その先端から放射状に縄を張って枝を吊り上げます。
• 対象: 松などの主役級の樹木。
• 特徴: 縄の先端に「わらび手」と呼ばれる装飾的な結び目を作ることが多く、見た目が非常に豪華です。
2. 幹吊り(みきづり)
芯柱を使わず、樹木自身の幹を利用する方法です。
• 構造: 高い位置にある太い幹に縄をくくりつけ、そこから下方の枝を吊り下げます。
• 対象: 芯柱を立てるのが難しい大木や、自然な姿を保ちたい樹木。
• 特徴: 柱がないため、よりナチュラルな印象になります。
3. しぼり吊り(竹バサミ・小枝吊り)
枝を縄でまとめて「縛り上げる」手法です。
• 構造: 横に広がった枝を上方に持ち上げるようにして、縄でぐるぐると巻き込みます。
• 対象: サツキ、ツツジ、低木類。
• 特徴: 物理的に雪が積もる面積を減らす効果があります。
4. 屏風吊り(びょうぶづり)
平面的な仕切り(生垣など)を守るための手法です。
• 構造: 生垣に沿って横方向に縄を張り、雪の重みが一箇所にかからないように分散させます。
• 対象: ウバメガシやカシなどの生垣。
• 特徴: まるで屏風のように見えることからその名がつきました。
💡 雪吊りの時期とマメ知識
• 実施時期: 富山県では通常、11月上旬から12月初旬にかけて作業が行われます。逆に、取り外す「雪吊り解き」は3月の春分の日前後が一般的です。
• 職人の技: 縄の張り具合(テンション)を均一にするのは非常に難しく、熟練の職人(庭師)の腕の見せ所です。
• 素材: 基本的には「藁縄(わらなわ)」を使用します。天然素材は適度に伸び縮みし、木を傷めにくいというメリットがあります。
富山の冬は水分を含んだ「重たい雪」が降るため、これらの雪吊りは庭木を折らないために欠かせない、先人の知恵が詰まった伝統技術です。